低血圧
もっとも発生頻度の高い合併症です。血液低下の起こりやすい原因として、高齢、糖尿病、低栄養、貧血、心機能障害などが挙げられます。自覚症状としては、あくび、吐き気、嘔吐、頭痛、動機、冷や汗などがあります。長期間透析を続けていると、次第に低血圧になることがあります。無症状のこともあります。
対策としては、ドライウェイトを上げる、透析時の除水量を少なくする、HDFに変更、バランスのよい食事を心がけるなどです。低血圧治療剤を使用することもあります。
For Patients
血液透析では、血液を体内から外部へと出して機械を通して血液をきれいにし、再び体内に循環させます。このため、1分間に約200mlの血液を取り出す必要があり、これを約4時間持続させるので、普通の血管ではこれだけの血液流量を確保できません。このため、一般的には利き腕の反対の腕でシャントを作成します。
シャントは、手術によって静脈と動脈をつなぎ合わせて太い静脈にしたものです。シャント作成の手術は局所麻酔で行われ、約1~2時間程度です。
血液透析では、まずシャント部に動脈用と静脈用の針を刺します(穿刺)。その後、個々の患者さんで設定された血液流量まで上げていきます。体外へ引き出された血液は、血液ポンプを経てダイアライザーと呼ばれる、いわゆる人工腎臓に送られます。ダイアラザーの中で余分な老廃物と水分が除去されてきれいになった血液は静脈側の穿刺針から体内に戻っていきます。この循環を各患者で設定された透析時間の間続け、予定した水分量が体内から引き出されたところで透析が終了します。
*生寿会グループでは透析専門医より、定期検査や合併症の治療も同時に受けられます。 シャント血管外科センター専門医より、シャントトラブル・ケアの対応をしています。
低血圧
不均衡症候群
貧血
高血圧
高カリウム血症
感染症
二次性副甲状腺
機能障害
透析アミロイド症
かゆみ
A Day in the Life of a Patient
透析患者さんはどのような一日を過ごしているのか、ここでは簡単なモデルケースでご紹介します。
生寿会グループで血液透析を受けられる場合を想定しています。また、スケジュールの中に出てくる時刻や手順等はあくまでも一例です。患者さんのライフスタイルによって様々ですので参考までにご覧ください。
※施設によってサービスが異なる場合があります。詳細は各施設へお尋ねください。
A Week in the Life of a Dialysis Patient
患者さんのライフスタイルは様々です。ここでは3パターンのスケジュール例をご紹介します。
Bさん(50代)
働きながら週3回夜間透析を利用
Cさん(60代)
透析後は体を休めるためパートは午前中~昼に配分
※施設によってサービスが異なる場合があります。詳細は各施設へお尋ねください。
cost
1ヶ月の透析治療の医療費は、患者さん一人につき約40万円程度が必要といわれています。透析治療の医療費は高額ですが、患者さんの経済的な負担が軽減されるように医療費の公的助成制度が確立しています。透析患者さんは、必要な手続きをすることで次のような制度を利用することができます。経済的な不安を少しでも和らげ、安心して透析治療を受けていただくためにこれらの制度をぜひご活用ください。
健康保険に加入している患者さんが対象で、1カ月(同じ月の1日~末日)の病院などでの窓口負担額が自己負担限度額を超えたときに、その超えた金額が公的医療保険から支給される制度です。自己負担限度額は年齢(70歳未満か70歳以上か)や所得によって異なります。
差額ベッド代や入院時の食事代の一部負担、先進医療の技術料などは自己負担となります。
健康保険に加入している透析患者さん全員が対象で、高額療養費の特例として(一般の高額療養費とは異なる)透析治療の自己負担額が1つの医療機関につき月額1万円(一定以上の所得がある人は2万円)となります。ただし、同じ医療機関でも外来・入院・薬局は別扱いです。また、入院時の食事代は自己負担となります。
身体障害者手帳1~3級(愛知県・名古屋市では腎臓機能障害4級まで)の障害者が愛知県内の病院などで医療を受けた場合に、自治体が医療費(保険診療分)の自己負担額を助成され、無料になる制度です。名古屋市の方は所得制限がありますので事前に確認が必要です。
※自治体によっては重度心身障害者医療費助成制度と呼ばれる場合もあります。助成内容は自治体によって異なるので、事前に確認が必要です。
【参考】身体障害者手帳
身体障害者福祉法に定める障害の程度に該当すると申請できます。
身体障害者が日常生活をしやすくすることを目的としています。じん臓機能障害は1.3.4級があります。
申請することにより、色々な福祉制度の利用が可能になります。例えば、医療費の助成、各種手当、税金の減免、交通機関の運賃割引などがあります。
心身の障害を除去・軽減することを目的とした医療制度で、血液透析やCAPDを受けた場合の自己負担分を国制度で助成します。世帯の所得により自己負担があります。
助成を受けるには身体障害者手帳を取得していること、自立支援医療機関の指定を受けていることが必要です。
原則1割負担ですが、低所得者を対象とした減免措置もあり、世帯の所得や疾患などに応じて自己負担額が減額されます。
※ご紹介した上記の詳しい内容は、お住まいの自治体、もしくは医療ソーシャルワーカーへお問い合わせください。
Q&A
治療
透析時間と回数を減らすことはできますか?
生活
水分制限をするように言われました。
生活
酒とタバコをやめるよう言われました。本当にやめなければいけませんか?
生活
透析患者はサプリメントを服用してもよいですか?
生活
祖母に透析が必要になりましたが、一人で通院するのは心もとないです。何かいい方法はありますか?
生活
透析導入後、はやく社会復帰(会社への復職)したいです。
保障
障害給付金の受給について教えてください。
費用
治療費はどれぐらいかかりますか?
ご自分の治療については主治医または透析スタッフへお気軽にご相談ください。
もっとも発生頻度の高い合併症です。血液低下の起こりやすい原因として、高齢、糖尿病、低栄養、貧血、心機能障害などが挙げられます。自覚症状としては、あくび、吐き気、嘔吐、頭痛、動機、冷や汗などがあります。長期間透析を続けていると、次第に低血圧になることがあります。無症状のこともあります。
対策としては、ドライウェイトを上げる、透析時の除水量を少なくする、HDFに変更、バランスのよい食事を心がけるなどです。低血圧治療剤を使用することもあります。
透析を始めたとき(導入期)には、透析中や透析終了後に頭痛や吐き気(不均衡症状)が起こることがあります。これは、血液から老廃物は抜けますが、しばらくの間、脳の中では老廃物が残っていて、脳内の圧力(脳圧)が上がってしまうことにより起こります。自然に回復するので心配はありません。
不均衡症状が出ないように、最初は透析の効率(血液流量、ダイアライザーの大きさ、透析時間など)を落として行うようにしますが、症状が強い場合は、脳圧を下げる薬(点滴)を使用することもあります。
腎不全になると、腎臓内で分泌される「エリスロポエチン(造血ホルモン)」の量が低下し、貧血になりやすくなります。また、血液中の尿毒素が増えることで出血しやすくなったり、赤血球の寿命が短くなったりすることも原因です。
主な症状は、疲れやすくなる、手足のだるさ、階段の昇降時などの動悸・息切れなどがあります。貧血はエリスロポエチンや鉄剤の注射などが有効です。予防法としては十分な透析や栄養バランスの良い食事、運動の習慣といった生活習慣の改善も大切です。
透析導入期には、多くの方に高血圧が見られます。原因は水分や塩分の取りすぎで、うまく排出できず体液量が増加します。体重増加には気を付けましょう。また、高血圧は動脈硬化、心臓病、脳卒中、視力障害(眼底出血)などの原因にもなります。
カリウムを多く含む食品を取りすぎると発症し、手足のしびれ、重い感じ、口のしびれ、脱力感、知覚異常、味覚異常、違和感などの症状があります。さらに血液中のカリウムの値が上がると脈が乱れ、心臓が止まることもあるので危険です。予防には、食事によるカリウムの摂取量に注意することが第一です。
透析患者さんの抵抗力は低下しているので感染症にかかりやすくなります。穿刺部から細菌が侵入して起こるシャント感染、尿量が少ないために起こる尿路感染、風邪をこじらせて起こる肺炎、結核、輸血によるウイルス性肝炎などがあります。
皮膚やからだを清潔に保ち、十分な透析と栄養摂取を心がけ、予防注射を積極的に行い、外出後には手洗い・うがい、皮膚の傷にも気をつけることなどが、感染症の予防につながります。
腎臓機能の低下により、血液中のカルシウムやリンのバランスが崩れると、副甲状腺が適切なバランスに戻そうとして過剰に副甲状腺ホルモン(PTH)を作り出します。最初のうちは無症状ですが、進行すると骨折や体のかゆみ、関節の痛み、心筋梗塞などを招く恐れがあります。食事療法が大切で、リンとカルシウムの摂取をコントロールしましょう。
透析療法を長く続けるにしたがい、透析では十分に除去できないβ2-ミクログロブリンと呼ばれる尿毒素が体内にたまっていきます。大量にたまったβ2-ミクログロブリンはアミロイドという物質をつくり、このアミロイドが腱や骨、関節に蓄積して、さまざまな障害を引き起こします。症状には、手のつけ根のしびれや痛み、肩・膝などの関節痛、首、腰、四肢などの運動障害、バネ指(スムーズな指の曲げ伸ばしができなくなります)などがあります。
高性能のダイアライザーや効率の高い透析療法を用いて十分に透析を行うことで、透析アミロイド症の発症を遅らせることができます。治療は、おもに痛みを和らげる対症療法(薬物療法や理学療法、手術など)が行われます。