ご家族の皆さまへ

看取り「旅立ちの準備」

「ありがとう」をもらう分だけ
「ありがとう」を伝えたい
愛する人との最後の旅路、
共に歩んでいきましょう

はじめに

すべての人は最期の時を迎えます。 限られた日々を過ごす中で様々な心配や不安を感じることでしょう。 私たちと一緒にこれまでの感謝の気持ちを伝え穏やかな旅立ちを迎えられることを願います。

残された時間が月単位から
週単位の時期

水分や食べ物への興味が減ってきます

だんだんと身体が食べ物を受け付けなくなり、食べられる量が減ってきます。栄養量やバランスが気になるかもしれませんが無理に食べることが負担になる場合もあります。 食べてもらいたいご家族の気持ちと、食べようと思っても食べられないご本人の間で葛藤が生まれることもあります。食べたくなくなることは、身体が「この世を旅立つ準備をしている」というサインです。自然なことで辛いものではありません。

食事時間や回数にとらわれず、食べられるときに、食べられるものを口にするぐらいがよいでしょう。 氷片やかき氷、アイスクリームなど口当たりの良いものを好まれることがあります。 少しずつゆっくり食べられるようにしてあげてください。

飲み込む力が弱くなり、むせやすい場合はスポンジブラシにレモン水など湿らせて口や唇を湿らせるとさっぱりします。 唾液が減り、口の中が乾燥しやすくなります。点滴では口の渇きは改善しないので、スポンジブラシなどを使用し口の中の保清・保湿をしましょう。

体のだるさが強くなり、 ぼんやりしている時間が増えてきます

トイレに行くことやお風呂に入ること、難しいことを考えるのも辛くなり、ぼんやりしていることが多くなります。 安心して過ごせるようにお風呂に入るお手伝いや排泄のお手伝いをしていきます。

何かをしてあげるより、一緒にいてあげることが大切です。 会わせたい方には早めに会ってもらいましょう。 伝えておきたいことは早めに伝えておきましょう。

泣くことを我慢したり謝ったりしないでください。涙は愛情の大切な表現であり、伝えたいことが伝えやすくなります。 やり残したことでご家族だけでは実現が難しいと思うことは遠慮なくご相談ください。

物事の見分けがつかなくなります

脳の酸素の循環不全や身体の代謝異常から、認知症に似た「せん妄」という症状が出ることがあります。 これも体と心がお別れの準備している段階です。このような時は本人の言葉を否定せず、手を握ったり、安心できるような会話をしてあげてください。興奮が強く落ち着かない場合は、お薬が必要か医師と相談していきます。


失禁したり、尿量が減ってきます
尿の色も濃くなります

体が弱っていくにしたがって内臓全体の働きが低下し腎臓の働きも低下します。筋肉のゆるみにより尿や便が自分でコントロールしにくくなります。 水分を摂る量が減ることで起こる症状ですが、この時期に無理に点滴を増やしたりするとむくみが出たり痰が多くなったりして余計に辛いことがあります。

残された時間が週単位から
日単位の時期

声をかけても目を覚ますことが少なくなります

だんだん睡眠時間が長くなり昼間も眠っていることが多くなります。 夢と現実を行ったり来たりするようなときがあります。 声をかけても目を覚ますことが少なくなっていきます。 眠気があることで苦痛が和らげられることがあります。 手を握ったり、身体をさすったり、静かに話しかけたりしてあげてください。

口や喉の分泌物が増えます

体液のバランスが崩れ口の中の分泌物が喉の奥にたくさんたまることがあります。頭部を少し高くしたり顔を横に向けるなどすると喉元のゴロゴロする音が治まることがあります。自然な経過なので過度な心配はいりませんが、必要に応じて吸引器の使用を勧められることもあります。


皮膚の色の変化

脳から不明瞭な指令が送られ手足が冷たくなったり熱くなったり皮膚の色が変わったりします。 血液循環が悪くなるため、特に手足が暗い青色に変わることがあります。心拍や脈拍はゆっくり、弱く、不規則になっていきます。様々な生理的変化が身体におこり、じっとりと汗をかくことがあります。

呼吸のペースが乱れてきます

息づかいが荒くなったり、ゆっくりなったりします。 大きなため息のように深い呼吸をすることもあります。時には不規則な呼吸になり、一時的(数秒~数十秒)に呼吸がお休みすることもあります。口を開けて顎を動かし、あえぐような呼吸が始まると数時間で旅立ちとなることがあります。

次第に意識がなくなり、やがて呼吸が止まり、脈がなくなります

苦しそうで見ていて辛いと感じるかもしれませんが、意識が遠のいていくので、ご本人はそれほど苦しさを感じていないと言われています。最期の時まで、聴覚・触覚は残ると言われています。お別れが近づいてきたら、そっとそばで手を握ってあげてください。体に触れながら「ありがとう」などの言葉をかけてあげるとよいでしょう。鼻に手を当てて、息が止まっていることを確認してください。

病状にもよりますが、8割くらいの方はゆっくりとした変化をたどり、2割ぐらいの方には急な変化が起こることもあります。また、すべての方が同じ経過をたどるのではなく人によって異なります。変化があればその都度お伝えしますが、気になることは医師や看護師に遠慮なくお尋ねください。

亡くなられた後の対応

まずは訪問看護師(または主治医)に連絡をしてください

救急車を呼ぶと本人が望まない延命処置が行われることになります。亡くなられた時は慌てて救急車を呼んでしまわないようにしましょう。亡くなられてからすぐに連絡をする必要はありません。ご家族の皆様で十分にお別れをしてからで大丈夫です。

連絡を受けた医師は到着後診断し、死亡診断書を発行します。

訪問看護師や葬儀社のスタッフが、ご本人が生前好まれていた服を着せてあげたり、体をふいたり、お化粧のお手伝いをします。着せたい衣類などありましたらご準備ください。